東京湾と河川の水質|釣った魚を食べてもよいか?

お魚料理

東京湾の水質は改善されつつあり、数10年前の高度経済成長時代から比べると格段に良くなりました。

しかし、2019年夏の大雨で東京オリンピックトライアスロン会場(予定)お台場の水質が、規制値の20倍を記録したことや、2019年秋の台風による大雨・洪水で、東京湾の水が茶色く濁ったことなどから、降雨や下水排水の影響を強く受けることが分かります。 大雨時の処理については、合流式を取ると、大雨で処理能力を超えると、一部がそのまま河川や海に、汚水(生活排水)とともに排出されることとなり、これが、水質低下の原因となりるのです。

水質低下の原因は、東京都の下水の処理方式|合流式

出典:東京都ホームページ http://www.gesui.metro.tokyo.jp/business/pdf/gouryuukaizen2_01.pdf

東京都の下水システムの特に大雨時の欠点ともいえる合流式ですが、この図のように雨水で汚水を希釈して排出しています。なお、上の図のように単純ではなく、沈殿池に汚れた部分を貯めるように整備されていますが(下図)、それでも大雨になり流量が増えると河川や海にあふれ出してしまいます。

出典:東京都ホームページ http://www.gesui.metro.tokyo.jp/business/pdf/gouryuukaizen2_01.pdf
出典:東京都ホームページ http://www.gesui.metro.tokyo.jp/business/pdf/gouryuukaizen2_01.pdf

具体的には水中のBOD濃度(生物化学的酸素要求量。それ以外にもCOD(化学的酸素要求量)などの指標が重要)、大腸菌数が増加し、下水臭い水質となり、河川が浅い、多摩川水系や特に人口密集地を流れる隅田川水系などでは顕著です。※流量の多い荒川、利根川水系では、ある程度影響が緩和されるように思えます。なお、海水浴場(遊泳)の基準では大腸菌数が非常に重視されます。

しかし、東京湾やおもな河川は、通常であれば、流れ込む河川の水質を含め、BODは基準値である10ppmを下回り、ほぼきれいな水と言われる5ppmほとんど下回っているレベルにあります。

平成27年7月1日国土交通省関東地方整備局京浜河川事務所 多摩川について
http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000627905.pdf

これは多摩川の水質調査の結果ですが、最河口部の大師橋付近(ここは汽水域で、シーバスやクロダイ、シジミなどが生息)でも確かに改善されています。

東京湾の観測データで、主にCODのデータを中心に解説されていますが、湾奥程、数値的に悪くくなる傾向があります。

http://www.tbeic.go.jp/kankyo/suishitsu.asp

水質の指標としては、BOD、大腸菌数、COD、DOなど様々な基準がありますが、こちらのCODの比較がある程度、味もに与える水質と一致しているように考えられますが、それでも、湾奥部は体感とはことなります。また、ケミカル臭のようなものは、酸素濃度や大腸菌数で表せないので、この辺りは難しいところです。

http://www.tbeic.go.jp/kankyo/suishitsu.asp
http://www.tbeic.go.jp/kankyo/suishitsu.asp

上記を見る限り、水質的にそれほど問題の海域はないのですが、下水処理場や下水の排水される地域の近辺で特有の臭いが発生する場合があり、また、流量のある、ある程度正常な河川の流れ込みでは、逆に周辺の水が清浄になったりと、東京湾の水質は、微妙なバランスの上に成り立っています。

湾奥では、どう考えても、隅田川河口よりも江戸川や荒川河口の方が水質がよいように思え、三番瀬の部分(江戸川河口から上記図の花見川河口を含む)の方がお台場よりも水質が浄化されている印象があるのですが、この辺り非常に微妙なところです。

本サイトで紹介する釣り場について(特に東京湾奥の釣り場について)は、魚を食べたとしても直ちに健康上の問題が生じるとは考えにくいですが、河川部や、湾奥については、すごく美味しいとは言えない地域もありますので、食べる場合は、自己責任でお願いします。

なお、回遊性の魚については、あまり地域差は感じませんが、クロダイやメジナなどの居つきの魚、シーバスなどの大型の魚、河川部、汽水域の魚については、地域差・個体差があるものの、川や海の臭いが、生活排水臭がする場合は、高確率で同じような臭いがします。

海流の関係

東京湾内は、閉鎖的な海域と思われがちですが、外洋(太平洋から)からの海流が流入出していてある程度循環しています。

流入した海流は、基本的には冬季は時計回り、夏期には反時計回りに湾内を流れています。また、富津岬を境にして多少流れがことなり、富津岬よりも南では、概要の影響が大きく、従って水質もよくなります。こちらに詳しく記載されています。

http://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/2004annual/annual2-08.pdf

赤潮と青潮

赤潮:赤潮はプランクトンの異常発生によるもので、主にプランクトンが山椒を大量に消費し、酸素濃度が低下て水質が悪化します。以下農林水産省が過去に回答したものです。

赤潮(あかしお)はなぜ発生するのですか。

赤潮が発生する原因(げんいん)としては、生活排水(せいかつはいすい)や工場排水(こうじょうはいすい)などが、海に流れていくことによって、海水の栄養分(えいようぶん)が多くなるこ とが考えられます。すると、おもに植物性プランクトンがその水域(すいいき)に異常(いじょう)に増(ふ)えることがあり、海水が赤く染(そ)まったりして海の色が変わります。この現象(げんしょう)のことを「赤潮」とよんでいます。 赤潮がおこると、プランクトンが魚のえらに触(ふ)れ、えらに障害(しょうがい)をおこして呼吸(こきゅう)できなくなったり、プランクトンが大量に酸素(さんそ)を消費(しょうひ)するため海水の酸素が欠乏(けつぼう)して大量の魚が死んでしまうこともあります。 赤潮は、陸に近く浅い海で、陸からきたない水が流れ込んでくるところに多くおこりやすく、たとえば、瀬戸内海(せとないかい)などの狭(せま) い海や、海水がよどんでいるところです。 また、滋賀県(しがけん)の琵琶湖(びわこ)など、湖(みずうみ)でも赤潮は発生します。

平成14年7月にお答えしました。

出展:農林水産省ホームページ http://www.maff.go.jp/j/heya/kodomo_sodan/0207/09.html

なお、東京都は定期定期に赤潮の調査を行っていますが、海水温の高い時期に多く発生する傾向にあり、海水の色が茶褐色から赤っぽくなります。以下、東京都の調査結果です。

http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/water/tokyo_bay/red_tide/red_tide.html

青潮: 青潮は、汚れた内湾で初性が多く、赤潮同様に、プランクトンが異常発生➡プランクトンが死に死がい海底に沈む➡分解されて硫化水素が発生➡台風などの強風で海面上昇➡海が青色になり➡硫化水素により酸素濃度が低下➡魚や貝などが死ぬ。ということです。つまり汚染した排水か原因といえます。

以下当サイトの主観、経験則に基づき、データ的な検証はしていませんが、魚種別に分類してみました。

魚種別(東京湾、近郊の河川で釣れる魚)の比較

以下、ある程度主観に基づきますが、

水質と味の相関関係があまりない魚

太刀魚、アジ、シロギス、サバその他サッパ、イワシなどの小魚。

タチウオ
アジやサバ、イナダなどの回遊性の青物
シロギス
ハゼ

水質と味の関係が密接

メジナ、クロダイ、キビレ、アイナメ、コイ、ボラなど居つきの魚。特にメジナは磯場や堤防に居つき、海藻などを食べていたりします。同様にクロダイも、堤防に居ついて、カラス貝や牡蠣などを食べていたりする個体も多いので、水質に影響されます(クロダイについては回遊性のものも多いので、なんとも言えません。)ボラやキビレなどの汽水性の魚も、水質の影響が出やすいといえるでしょう。

キビレ
クロダイ
メジナ

●個体差が大きいもの

シーバス(フッコクラス以上の大型のもの)、大型の青物、カサゴなど。

スズキ(シーバス)
カサゴ
ブリ(イナダ、ワラサ)

なお、東京湾については、海流や水深なども関係し、また流れ込む河川の影響もあるので、必ずしもデータに現れた数値=魚の味というわけではありません。湾口の観音崎とお台場あたりを比較すると、同じ魚種であれば差は顕著ですが、回遊性の魚であればあまり感じないのも事実です。

なお、東京湾でよく釣れるシーバスは、場所によって、又は個体により差が大きいので、できるだけ回遊してそうな個体(銀色っぽい個体。黒っぽい個体は、居つきの個体である可能性が高い)を選びましょう。

血抜きなどの処理である程度対応しよう

魚は、活〆や血抜きである程度臭みを取ることができます。特に血抜きをするとよいでしょう。

1.血抜きをする。

締める場合、血抜きを行うと効果的です。ただし、水質が悪い場合は、現場の海水でF行わない方がよいかもしれません。

2.しばらく人工海水や水道水で泥抜きをする。

ウナギやカニなどある程度生かして置ける魚の場合、しばらくきれいな水で飼育し、泥抜きすると味見がよくなります。

3.塩水処理をする。

塩水処理とは、飽和食塩水に魚の身を漬け込み、浸透圧で水分を抜き取る方法です。特に汽水域の魚に有効で、川臭さ、泥臭さを取るのに有効です。こちらのページて詳しく解説いたしました。

湾奥や汽水域の魚を美味しく食べる|塩水処理・塩水〆め

飽和食塩水処理
浸透圧で脱水

なお、魚を釣る➡海水がある程度きれいならば、現場で〆めて、血抜き➡持ち帰って塩水処理がよいでしょう。

ウナギやオイカワなどの小魚は、しばらく水槽で飼い泥抜きが最適です。

4.気になるようなら、湾奥は避ける。

一般的に、海水浴場があるレベルの横浜以南(海水浴場のある八景島以南)、千葉県側であれば(稲毛以西)であれば、それほど水質を気にする必要はないと思います。

因みに、海水浴場の条件としで千葉県は稲毛海岸が神奈川県で八景島横にある海の公園が同様にボーダーラインで、東京都にもお台場や城南島、葛西臨海公園などに砂浜はあるものの、遊泳には不適となつているため(ただし、葛西臨海公園は遊泳可能になった年もあります。)、心配ならばこれらを目安にしていただければと思います。文頭で紹介したお台場の件も以下の海水浴場の基準がベースとなっています。

観光スポット | 千葉県公式観光サイト ちば観光ナビ
千葉県の観光スポットを大きな写真付きでご案内します。風景やレジャー、グルメ・アウトドアなどのカテゴリやエリアで検索、現在地から近いスポットの検索が可能です!
出典:環境省ホームページ http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=442

千葉県内のデータは公表されていますが以下のとおりです。

https://www.pref.chiba.lg.jp/suiho/press/2019/suiyoku/documents/r01chitenzu.pdf

以上、今回は、東京湾の水質について、解説してきましたが、行政が禁止するほどではなく、本奥にも多くの漁協や漁場が存在していますので、それほど気にする必要はないかもしれませんが、釣った魚を食する場合は、あくまで自己責任でお願いいたします。

東京湾水質浄化対策

1.合流式であっても、高度処理施設の整備・雨天時に下水の一部が未処理のまま河川に放流される合流式下水道の改善などを地道に行っています(本来は分流式にするべきですが、人口、雨の流量を勘案するとかなり難しいため、汚水から、リンや窒素を取り除くよう改善を進める)

2.東京湾には水質改善のために牡蠣が沢山導入されていますが、ほとんど食用にはできません。先日、お台場にも大量に牡蠣が投下されましたが、牡蠣は、1日約300リットルの海水を濾過すると言われていますが、ろ過された細菌や汚染物質は下記の体内に溜まり、特に最近やウィルス類には汚染されやすい貝で、相当きれいな海域でも、一定の確率でノロウィルスに汚染されていたりします。

近年、外国人により、江戸川河口などの牡蠣が大量に採取され、食べられている(飲食店などに流通の可能性あり)ようです。採取者にすれば、シジミやホンビノスガイのような感覚なのでしょうが、水質浄化システムとしての機能面からも、健康面からも、東京湾、得に湾奥などのものは、採取して食べるのは避けた方がよいでしょう。熱帯魚水槽のろ材を食するようなものですので..

https://ameblo.jp/oysters/entry-11843207158.html

コメント

  1. […] 引用(東京湾と河川の水質|釣った魚を食べてもよいか?)より […]

    • 釣り場太郎 より:

      実際は、江の島は外洋側に行くとかなりきれいですが、東京湾の場合は、観音崎付近から急激に水質がよくなります。
      原因はいろいろありますが、この辺りに湧水が沸いていることと、地形的に海流が外海から大量に流入していることなども考えられます。
      湾奥から船で大島方面に向かうと、アクアラインのあたり→観音崎・富津ライン→剣崎・洲崎ラインとみるみる海水がクリアになっていくのがわかりますね。